ほがらかな笑いをふりまきながら三人の若者たちが歩いてきて、ふと私の前で立ち止まった。
 濃い緑の服に身を包んだ王の嫡子セオドレドと、エオメル、エオウィン兄妹。
「蛇よ、こんなところで何をしている。」
 セオドレドの厳しい声が飛んだ。
「忠心に励む臣下に対して、なんというつれない申されようか、わが殿よ。」
 腰を屈めつつ卑屈に下から見上げると、セオドレドの端正な顔が潔癖そうに歪む。
「・・お前の言葉は額面どおりに受け取れぬ。」
 セオドレドの隣でエオメルが剣のつかに軽く触れるのがみえた。
 思わず反射的に後ずさる。萎えた足は突然の動きに脆くも崩れて、私は地面に這いつくばる格好となった。
「行こう。不愉快だ。」
 踵をかえす三人。私をじめじめとした日陰に転がしたまま、眩しい日の射す方へと歩いていく。
 行き過ぎていく、若さを謳歌する美しい者たち。光溢れる世界へ消えていく。
 私はひとり、日の射さない暗黒のなかで見送る。暗い情熱を胸に滾らせながら。



(「陰花」 SSより抜粋)